
◆「陰で褒められる」と、なぜ嬉しいのか
誰かに
「○○さんがあなたのこと、すごく褒めていたよ」
と聞いたとき、思わず心がじんわり温かくなる――そんな経験はありませんか?
面と向かっての称賛より、
なぜか「陰で褒められた」ときのほうが、記憶に残る、それは
心理学的にも裏づけられていて、「ウインザー効果」と呼ばれるものです。
これは
「第三者を通して聞いた情報のほうが、信ぴょう性が高く感じられる」という効果。
◆どうせなら直接褒めたい?――でもちょっと待って
🤔だったら、直接その人に褒め言葉を伝えればいいじゃない、
と思うかもしれません。もちろん、それでもまったくいいわけですが、
「ありがとう」というお礼の言葉や感謝の気持ちを期待しない、
見返りのない行為だったからこそ、人の心を動かす
ことがあります。
ただ、その人の良さを
伝えたいから伝えているんだ、その人に知られなくてもかまわない、
そういう“陰の褒め言葉”は、静かに人の心に届きます。
かのビートたけしさんのお母さんも、人を褒める達人だったそうです。
だから多くの人に慕われ、信頼されていた
◆ウインザー効果を実感した、あの日のこと
このウインザー効果を私自身が実感したのは、次女の高校受験のときでした。
これは、私の失敗のような、成功のような体験なのですが、
3年生の冬になって、
「やっぱり塾に行きたい」と言い出した娘。これまで塾通いとは無縁だった我が家には、その一言はちょっとした事件でした。
なんせ、私自身が「塾」というものを知らずに育ち
(夏休みに、近所のお寺
・・寺子屋のようなところに通った記憶がある(笑))
他の子供達も近所のそろばん教室にしか通わせたことがありませんでした。(教育不熱心さゆえ)
慌てて知人に相談し、何とか滑り込みで、なんとか塾という名の付くところに入れてもらえたのですが
――その先生がなかなかの“クセ者”。とても厳格で、ワンマンなところがあり、娘も次第に音を上げ始めました。
ある日、先生から「一度、お母さんと話したい」との連絡。
一体、どういう躾をしているのか知りませんが・・
随分な誤解があるなあ、と思いながら、私は先生の言葉をただただ、聞いていました。
そして最後は
こちらの言い分は伝えましたので、あとはそちらで判断してください。
というものでした。
それは、
こっちはやめてもらって結構です、
という言い方にも聞こえました。
私は呆れたものの、受験はすぐそこに迫っているし、今さら他に移るなんて考えられない、
先生がこんなに娘のことを誤解している、娘にこのことを伝えたら余計にうまくいかなくなる、
一体二人のために自分はどうしたらいいんだ?!
家路に車を走らせながら、ぐるぐる考えこんでしまいました。
当然、娘は私の顔を見るなり聞きました。
「先生、なんて言ってた?」
私は少し迷った末に、こう答えました。
「すごく褒めてたよ。塾では厳しく言ってるけど、
本当は“あの子はやればできる子だ”って。」
え。そうなの?
この日以来、娘の表情が少しずつ変わっていきました。
数週間後の懇談で、先生がこんな一言を。
一体、どういう風に言われた(説得した)のかわかりませんが
・・・
最近の○○さん、ずいぶん変わってきました。
私は、心の中で思わずガッツポーズをしました。
あのとき、「陰褒め」を“演出”した
◆陰で褒めることは、誰かの未来を変える
娘は無事に志望校に合格し、今ではすっかり社会人。
あの頃のことなど、もうすっかり忘れているようです。
けれど私にとっては、あれが「ウインザー効果」の力を初めて実感した忘れられない出来事となりました。
怒りを感じ、つい悪く言いたくなることってあると思いますが、
切り札として
ウインザー効果というものがある、
ということは覚えておくといいかな、と思います。
それは、時に
自分自身にも、相手にも、驚くほど良い影響をもたらしてくれます。
「直接届けるのではない、誰かの良いところを褒めること」。
それは、きっと世界を少しだけやさしくする方法なのです。